とはいえ、ここで会計学の講義をしてもつまらないし、もちろん私に「講義」などと銘打って書けるほどの実力もないので、ごく基本的なことだけを書いておきたいと思います。
「会計」というとすぐに“難しいもの”という風に考えて、端からやる気が起こらないなどという人も多少はおられるとは思いますが、そういう人は、書店に行くと『易しい決算書の見方』であるとか『やさしい財務分析』などという超入門編のような本が置いてありますので、是非、それを手にとって一読されることをお勧めします。
そうでない人。実際に簿記の知識があり、基本的なことはわかっているという人は、簿記の知識を前提にしながら、『会計学講義』や『財務分析』『キャッシュフロー会計』などの本を読まれるとよいと思います。またさらに、建設業許可関係業務、特に経営事項審査申請業務を扱っている人は、『建設業会計』に関する本や『建設業会計提要』(大成出版)は必読です。
前回、日本の会計制度は、商法会計と証券取引法会計、そして法人税法に基づく税務会計という3つの制度によるトライアングル体制にある事について簡単に触れておきました。
「会計」というのは、「ある特定の経済主体の経済活動を、貨幣額などを用いて計数的に測定し、その結果を報告書(決算報告書)にまとめて利害関係者に伝達するためのシステム」(神戸大学教授 桜井久勝著「財務会計講義」:中央経済社刊)という風に定義をされています。が、その目的は、3つの制度それぞれに違ったものがあります。
商法会計(計算規定)の目的は、配当可能利益を適正に算定することを通じて、会社債権者と株主との利益調整を図ることにあり、証券取引法会計は、投資家への情報開示(ディスクロージャー)に重きを置いています。したがって、ここでは、企業間の比較可能性を高めるために、厳格な会計基準が定められています。
法人税法による税務会計は、納税額を確定するための課税所得を算定することをを目的としているので、財務諸表(決算書)の作成と報告を目的とした会計ではないという意味で「税法基準による会計処理では企業の財政状態及び経営成績を適正に示すという企業会計の目的を実現できない」ことが予想されるとしています。