前回まで、1号代理権に関する業務(官公署に提出する書類の作成及び申請代理)と専門家責任について説明をしてきました。今回からは、2号代理権に関する業務(権利義務に関する書類の作成及び代理)について説明をしてみたいと思います。
行政書士法1条の3第2号は「前条の規定により行政書士が作成することができる契約その他に関する書類を代理人として作成すること。」という規定です。
ここでいう「代理」とは、1号代理権で説明したような公法上の「事実行為の代理」ではなく、純粋に私法上の「意思代理」であることは疑う余地がありません。つまり、行政書士は業務として、本人に変わって意思表示をなし、法律行為を行うことになります。
問題となるのは、「代理人として作成」する事が、契約交渉権を含むのかどうかという点ですが、この点では、平成13年6月に成立した行政書士法の一部を改正する法律(改正行政書士法)について書かれた、当時の総務省自治行政局行政課の二瓶博昭氏の論文(地方自治制度研究会発行「地方自治」平成13年9月号に掲載)があります。
その中で二瓶氏は、『ここでいう「代理人として」とは、契約等についての代理人としての意であり、直接契約代理を行政書士の業務として位置づけるものではないが、行政書士が業務として契約代理を行い得るとの意味を含むものであると解される。』という解釈を示しています。
この2号代理権の新設は、これまで弁護士の独占業とされてきた契約代理や会社定款の作成代理などの業務を行政書士にも開放したという点で画期的なもので、19条(罰則規定)にかからない非独占業務であるとはいえ、法定業務としては、弁護士と行政書士だけにしかできない業務であるということを私たちは重く受け止める必要があると思います。