前回に引き続き、今回からは行政書士の専門家責任の各論を検討していきます。これから説明する「義務」は、行政書士が専門家(プロフェッション)として業務を遂行していく上できわめて重要なものですので、是非、きちんと読んで理解をしていただきたいと思います。
許可・届出等の申請に必要な要件や基準の説明をなし、当該申請に必要な書類を指示し持参するよう促すべき義務
依頼者が行政書士に相談する段階では、依頼者自身が当該許認可等の根拠法令に関する知識を持っていることはまれであり、ほとんどの場合は、極めて大雑把に例えば「建設業の登録(?)をしたい。」などの相談からはいるので、行政書士は、依頼者の要求を的確に把握し、必要な許認可について説明し、さらに当該許可制度における許可基準等について説明をした上で、相談者から許可基準等に該当しているかどうかの聴き取りをしなければなりません。
聴き取りの結果、許可基準に該当しているという感触を得た段階で、行政書士は、自分に対する依頼意思を確認(この段階で、依頼者との間で事務委任の合意があったと見るべきであろう。)し、依頼者の側で用意すべき業務遂行に必要な書類を指示し、持参するよう促さなければならない義務を負います。
この義務を履行するためには、依頼者の個別の事情や環境に対応できるような必要書類一覧表やチェックリストなどの整備が必要になります。
申請必要書類保管義務
行政書士が、当該許可等の申請手続についての委任にかかる嘱託者たる申請人から預かった必要書類については、善良なる管理者の注意をもって保管すべき義務を負うものとされる。当たり前のことではありますが、この義務を意識していないと、なくしてしまったり、別の書類の間に埋もれてしまったりということが起こります。
この善菅注意義務を意識して事務所内の物理的な整備や預かり書類等の管理システムを整備する必要があります。