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業務実践講座

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(6)行政書士の専門家責任をどうとらえるか

 これまで、1号代理権に関する業務の流れを説明してきました。
 それは、官公署に提出する書類の作成=許認可申請等の行政手続に関する業務が行政書士業務の主要な柱となっており、この業務の流れを説明することによって、行政書士の専門家としての義務と責任を明らかにしていきたいと考えたからに他なりません。

 とかく、行政書士は、これもできる、あれもできるということは大声で言うのですが、その業務の中でどのような責任を負っているのかについては、ほとんど説明をしてきませんでした。

 しかし、これから拡大していく“情報化社会”の中で市民社会からの“信用と信頼”を獲得していくためには、自分たちが専門家としてどのような義務を履行し、どのような責任を負っているのかを説明することが、不可避的に重要なのだということを是非理解していただきたいと思うのです。

 そして、同時に今後私たち行政書士がその有用性を認知され、事務所経営を維持していくためには、市民社会からの“信用と信頼”を獲得するしか道がないのだという信念を共有していただきたいと心から願っています。

1号代理権に係る業務における行政書士の義務と責任

 依頼者と行政書士との間の契約の性質については、前述したように様々な構成が可能です。しかし、

「相談・調査・書類作成・申請代理という業務が事務処理の根幹をなしている以上、行政書士は受任者として善管注意義務(民644)を負うことに異論はないであろう。
 これは、個々の業務遂行の際、平均的一般の行政書士に要求される注意をもって行動しなければならないと言うことである。」
(『専門家責任の理論と実際』新日本法規出版刊 山川一陽、根田正樹共著 P.165)

 上記善管注意義務は当然のこととして、前述した業務遂行過程との関係で整序すると、許可等の申請に至るまでに行政書士の負うべき義務としては、許可・届出等の申請に必要な要件や基準の説明をなし、当該申請に必要な書類を指示し持参するよう促すべき義務、申請必要書類保管義務、申請必要書類の原本性、真正などの調査確認義務、申請人の本人性及び許可等申請意思の確認義務、さらには、説明・報告義務などが考えられます。

 ここでは、賠償責任保険に係る賠償責任の範囲を論じる必要はないので、詳細な検討は避けることとしますが、法定代理権(行政書士法第19条にかからない非独占業務であるとはいえ、法律上明記された代理権)という行政書士の社会的地位の向上に不可欠な権利を獲得したことによって生じる専門家としての義務なのです。この義務を回避するために代行のままでよいなどという議論は、権利だけを主張し義務を履行しない身勝手なものであり、到底社会には受け入れられないであろうと思います。

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