『自律的で、しかし周りとの関係を考える人の集まり』
前回、これから求められる組織観として、一番目にこのことをあげました。
それは、組織は人の集まり(コミュニティ)であり、そして、「組織の中の人間は、自分の行動を自分の利益のために選択する自律性を持つ一方で、周囲の人々との関係の中で協力的に全体をも考えた行動をする。」つまり、人は自律的な存在であると同時に協力的な存在でもある。という人間観に基づいています。
このような観点から行政書士会という組織を見てみると、行政書士という、それぞれが独立した事務所を経営するきわめて自律性の高い人々の集まりであり、また、行政書士業務そのものが公益性を有しているので、行政書士会という組織内においても協力的に全体を考える行動をとる資質を持った人々が構成しているということが出来ます。
ただし、ここには専業率という壁があるのですが、その問題はあとに譲ることにします。
行政書士会がそういう組織だとすると、なぜ、これまで「会には期待できない」という無関心・非協力が存在してきたのでしょう。
それは、前回の説明したようにヒエラルキー思考の運営がなされてきたからであると考えられるのです。
組織の中で、人々は情報を受け取り、処理し、或いはそれらの情報を自分の脳内で咀嚼する中から情報の意味を発見して新しい情報の創造を行ってきました。しかもそれは、個人として独立的に行われるだけでなく、人々は情報を交換しあい、相互に影響を与えながら、集団として行ってきたのです。このことを「組織の中の情報相互作用」といいます。
こうした「情報相互作用」の活発な組織の中では、人々の間での“共通理解”が増し、そのことによって、人々の間の“心理的共振”が起こり、組織の中での協働が促進されます。
ところが、ヒエラルキー型の組織の中では、情報が一部幹部の手に握られてしまい、この情報相互作用はきわめて弱く、共通理解やそれによる心理共振がほとんど起こらないことになります。従って、同じ組織内にいる人々の間でも、執行組織に中にいない人々には情報はほとんど伝わらず、蚊帳の外におかれるという組織環境が出来上がります。