前回、前々回で、新たな行政書士像を創造していくために「戦略的思考」が重要であることを説明しました。
今回は、その戦略的思考を実践していく上での解決策(ソリューション)の基本となる社会システムが変化をしていることを説明したいと思います。
20世紀後半(第二次大戦後)の高度成長を成し遂げた日本社会は、社会の隅々まで「ピラミッド型の階層組織」(ヒエラルキーといいます。)を作り上げて上意下達の意思伝達システムを使うことによって生産性を上げてきました。
このヒエラルキーを利用した問題解決の手法を“ヒエラルキーソリューション”と言います。
元々、この手法は、昔の軍隊で生まれたとされており、中央で立てた作戦で現場の兵隊を将棋の駒のように動かすために都合がよいシステムなので、『工業化社会』の中では、大量生産をするために必要な「肉体労働の生産性」を上げるために非常に都合の良いシステムであったわけです。
このシステムの特徴は、強固な中央集権による統制にあります。 従って、このシステムを用いる問題解決は、より上位の意思判断を仰ぐことによってすべての問題に対応しようと考えます。
ヒエラルキーソリューションは、肉体労働の生産性を上げることによって富を追求してきた工業化社会では、きわめて有効に作用してきました。
しかし、工業化社会が終焉を迎え、“知識労働”の生産性を上げなければ“豊かさ”を実現できない『情報化社会』に移行する中でヒエラルキーソリューションでは、問題を解決できなくなってきました。
それは、ヒエラルキー(階層)によって、階層のより上位にいる人ほど情報を多く持ち、その情報の優位性で地位を確保してきたことが、現在のように情報の流通が拡大し、変化の激しい時代に合わなくなってきたといえるのかもしれません。
ヒエラルキーソリューションの最たるものが、国会や政府に頼って法律を制定して問題を解決すると言ったことになるわけですが、同様に、組織の中では、最高意思決定機関に諮ってシステムを変えたり、マニュアル化をすることによって問題に対応してきたわけです。これがうまくいかなくなってきたと言うことです。
ここまで読むと、「そんなマクロ的な話はどうでもいいではないか。」と、思う方もいるのかもしれません。
しかし、人が社会の中で起きてくる問題を解決しようとするときは、必ず、マクロ的な視点(背景としての)を持って思考をしているはずです。
そこで、新たな問題解決策としてマクロ政策の中でとられた手法が、「すべてを市場に任せてしまおう。」という“新古典資本主義”に基づく“マーケットソリューション”です。