“予防法務”という言葉は、かなり昔から専門家(弁護士、学者)の間では使われていたのですが、一般的にはなってきませんでした。
“訴訟弁護士”に対して“渉外弁護士”という分け方がありますが、日本の弁護士のほとんどがこの“訴訟弁護士”として活動をしており、その片手間(?)として企業や個人と顧問契約を結んで契約代理等の仕事をしてきたというのが実態のようです。
グローバルな社会(特にアメリカ)では、一般家庭にも弁護士が入り込み、契約代理や身近な法律顧問として“予防法務的”な活動をしていることはよく知られています。
私達の制度である行政書士法は、昨年の改正法施行によってこれまでの“代書”業務から一歩踏み込んだ形での申請代理権と『契約書その他の書類を代理人として作成すること。』(第1条の3 第2項)という解釈に苦しむ条文ではありますが、契約交渉権を含む『契約代理』と解釈しても差し支えないといえる業務が加わりました。
私は、そのことを根拠に“予防法務”が行政書士にも出来るようになったのだと考えています。
これらの条項は、19条の適用は受けず、従って“独占業務”ではないと言ってあまり積極的に活用しない向きもありますが、業務独占となっている分野でも市場占有率はそれほど高くない実態を見れば、独占、非独占をあまり気にする意味はなく、積極的に捉えて、新たな分野として確立をしていく必要があるのだと思うのです。
今後、情報化社会へ移行し、“事後チェック・事後救済社会”が拡大していきます。それは、国民にとっては、“自己責任”を強要される社会なのです。そのときに頼れる予防法務の専門家は、行政書士しかいないという市民社会からの“信用と信頼”を得ることが出来れば、新たな社会システムの中で、行政書士制度がどのように変わってもそれぞれの行政書士が充分に生き残っていく道が開けるものと期待できます。