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【業務実践講座】
IT時代の法務知識④
~ITにおける法務とはなんぞや~
IT(インフォメーション・テクノロジー)は、そのまま「情報技術」と訳され、あたかも技術論のような響きがありますが、これが“社会のIT化”という言葉になると技術の問題ではなく、情報技術に基づいた価値観や文化の問題と言うことになり、まさしく、人の考え方、哲学的な思考の問題となります。
社会のIT化は、インターネットのようなパソコン通信のオープンネットワークを行政や経済取引、或いは市民活動などの社会的活動に利用しようと言う考え方なので、これまでのリアル空間での様々なやり取りをそのままインターネット上で再現しようという努力がなされ、それを実現するための法整備や情報通信インフラの整備が進められてきました。
しかし、インターネット(その他のオープンネットワーク)は、非対面取引であり、ネットワーク上を流通するデジタルデータという不可視なコンピュータ言語によるものであり、また、匿名性という特性を持っているために、従来の法的概念にはない様々な問題をはらんでいます。
特に、我が国の法制度では、法律行為の大半が“不要式行為”であり、意思の合致のみによって成立するものが多く、法令もしくは当事者間であらかじめ取り決めのない場合には、書面の作成は成立要件や効力要件ではありません。これは、対面取引を前提としているもので、信義則に基づいています。とはいえ、直接相手方に対して内容を確認し、必要に応じて後日のために契約書等の書面を作成する手法がとられてきました。
非対面のネットワークを利用した取引では、ディスプレイなどで契約の目的物や契約内容が示されていますが、対面ではないので、理解が不十分なままが免状にある「承認」ボタンや「同意」ボタンを簡単にクリックしてしまい、あとになってそれがトラブルになるケースが多いと考えられますが、現行の法制度では、結局利用者が行った「ボタンを押す行為」を意思表示の内容として考えざるを得ない場合が多くなるので、ボタンを押す前に熟考を促すなどの配慮が求められることになります。
(つづく)
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