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mail magazine Ozeki-Letter 2004.5.14【第50号】
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小田原支部の小関です。
【50号達成】
この号の発信をもって“50号”の達成です。
私は、昨年5月30日の創刊準備号の発信以来、毎週金曜日の午前9時前後に1回も欠落することなくこのOzeki-Letterを発信し続けてきました。
私がこのメルマガを発行しているのは、工業化社会から情報化社会への時代の大激変期にあって、新たな社会システムの中で行政書士制度が生き続け、行政書士がその事務所経営を継続し、維持していくためには、時代の流れを読み、その方向性にあった行政書士としての意識改革が不可避的に重要であり、そのための情報提供をしていきたいと考えたからです。
私は、この行政書士という職業が大好きであり、行政書士としての誇りを持って自分の事務所を経営し、又、微力ではありますが、本会や日行連、そして任意会の活動に貢献するために尽くしてきました。
その行政書士業界は、今、制度と社会の変化とのギャップや従来型の思考から抜け出せない組織運営によって大変厳しい状況にあります。
今こそ、私達行政書士一人一人が時代を見据え、国民の皆さんの権利を擁護し、義務履行を支援するために、又、健全な企業活動を支援するために必要な意識改革を行って、専門家(プロフェッション)としての知識・技量・倫理観をさらに高め、行政書士会という制度の維持発展に必要不可欠な組織を変革していかなければならないと思います。
読者である会員の皆さんと共に必要な意識改革を進めるために、今後もこのOzeki-Letterを発行し続けていこうと考えておりますので、引き続きご愛読下さるようお願いいたします。
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【業務実践講座】 ⑦
~行政書士の専門家としての義務について~
前回に引き続き、行政書士の専門家としての義務を説明します。
(3) 申請必要書類の原本性、真正などの調査確認義務、申請人の本人性及び許可等申請意思の確認義務
この調査・確認義務については、行政書士に関する判例等がないので、前掲の「専門家責任の理論と実際」の司法書士の調査・確認義務について記された部分を引用し、検討することとします。
――引用開始――
判例は、はじめ、司法書士は他人の嘱託に基づきそのものに代わって登記申請書類を作成することを業とするにすぎない、(中略)、形式的に必要書類を整え、記載要件の欠陥なきようつとめればよく調査義務はないとしていた(京都地判昭40.2.23訟月11.7.996)。しかし、その後原則として偽造であるかの調査義務を負わないが、偽造・変造されたものであることが一見明白な場合とか依頼者から調査を委託されるなど、特段の事情があれば調査すべきであるとするものが現れ(東京高判48.1.31金商360・19-結論消極)、ついで職務上の義務として書類が必要要件を具備しこれによって登記が出来るか調査点検すべきであり、明白な疑いがあるのに当事者が気付いていない場合など特段の事情があるときは精査すべきである。(東京地判52.7.12判タ400.166-結論消極)、(P140~141)
――引用終わり――
行政書士は、法定代理権を取得したばかりであり、上記引用部分の内はじめの部分の「調査義務はない」とする判例を参考にするべきであると考えますが、ここで、行政書士として特筆すべきことは、いわゆる虚偽申請についての責任です。
行政書士の法定業務としては、申請人(依頼者)から提出、或いは提示された情報が正しいものであるという前提で、その情報に基づいて申請書類を作成し、代理人として申請手続を本人に代わってする。と、いうことになります。
従って、申請者から提出、或いは提示された情報に虚偽があったとしても、行政書士の責任ではない。たとえば、行政書士が依頼者から税務申告に添付した決算書に基づいて国交省令に基づく財務諸表を作成したとして、その決算書の内容に虚偽があった場合(税務申告に添付したものとは違う決算書であった場合で、正式に作成された決算書そのものに粉飾等の虚偽があった場合は、商法上の問題となる。)を想定した場合。その虚偽の責任は、あくまで申請者にあると考えられます。同様に、申請内容についても行政書士が故意または虚偽事実を知りながら虚偽の記載を行って申請しない限り、当該申請の内容に虚偽があってもその責任は申請人にあるということになります。
次に、申請人本人の申請意思の確認ですが、行政手続きに関する代理権は、申請人の申請意思の決定を受けてなす事実行為の代理であるので、行政書士が、申請書の記載事項を説明し、理解を促した上で申請人のなした意思決定の確認は重要です。
この点から見ると、行政書士が依頼者の依頼を受けてなす業務は、申請意思決定を側面から支援する活動であるとも言えるのです。
(4) 説明・報告義務
説明・報告義務は、まさしく専門家の責任に関わるもので、とりわけ消費者(依頼者)との信頼関係の構築にとって重要な意義があります。
特に、依頼者は提出した資料に基づいて調査をした結果、何らかの疑義があった場合や、許可要件を満たさないなどの事実があった場合などに、その事実を適正に説明し、許可を得られない可能性のあること説明する義務を負うことはもちろんですが、審査過程における所轄庁とのやりとりなどについても出来る限り説明を行うべきであると思います。
(続く)