Ozeki - Letter

第15号

Ozeki-Letter

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【プロフェッションになろう】

~新たなプロフェッションの形を考えよう(8)~

前回、前々回で、新たな行政書士像を創造していくために「戦略的思考」が重要であることを説明しました。

今回は、その戦略的思考を実践していく上での解決策(ソリューション)の基本となる社会システムが変化をしていることを説明したいと思います。

20世紀後半(第二次大戦後)の高度成長を成し遂げた日本社会は、社会の隅々まで「ピラミッド型の階層組織」(ヒエラルキーといいます。)を作り上げて上意下達の意思伝達システムを使うことによって生産性を上げてきました。

このヒエラルキーを利用した問題解決の手法を“ヒエラルキーソリューション”と言います。
元々、この手法は、昔の軍隊で生まれたとされており、中央で立てた作戦で現場の兵隊を将棋の駒のように動かすために都合がよいシステムなので、『工業化社会』の中では、大量生産をするために必要な「肉体労働の生産性」を上げるために非常に都合の良いシステムであったわけです。

このシステムの特徴は、強固な中央集権による統制にあります。
従って、このシステムを用いる問題解決は、より上位の意思判断を仰ぐことによってすべての問題に対応しようと考えます。

ヒエラルキーソリューションは、肉体労働の生産性を上げることによって富を追求してきた工業化社会では、きわめて有効に作用してきました。
しかし、工業化社会が終焉を迎え、“知識労働”の生産性を上げなければ“豊かさ”を実現できない『情報化社会』に移行する中でヒエラルキーソリューションでは、問題を解決できなくなってきました。

それは、ヒエラルキー(階層)によって、階層のより上位にいる人ほど情報を多く持ち、その情報の優位性で地位を確保してきたことが、現在のように情報の流通が拡大し、変化の激しい時代に合わなくなってきたといえるのかもしれません。

ヒエラルキーソリューションの最たるものが、国会や政府に頼って法律を制定して問題を解決すると言ったことになるわけですが、同様に、組織の中では、最高意思決定機関に諮ってシステムを変えたり、マニュアル化をすることによって問題に対応してきたわけです。これがうまくいかなくなってきたと言うことです。

ここまで読むと、「そんなマクロ的な話はどうでもいいではないか。」と、思う方もいるのかもしれません。
しかし、人が社会の中で起きてくる問題を解決しようとするときは、必ず、マクロ的な視点(背景としての)を持って思考をしているはずです。

そこで、新たな問題解決策としてマクロ政策の中でとられた手法が、「すべてを市場に任せてしまおう。」という“新古典資本主義”に基づく“マーケットソリューション”です。
(つづく)

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【予防法務研究】『企業予防法務』の基本(12)

~株主代表訴訟に備える~

『株主代表訴訟』は、個々の株主が全株主を代表して会社に代わって取締役等の会社に対する責任を追及する制度で、平成5年の改正商法によって、訴訟定期の手数料が、訴訟額に関係なく一律 8,200円になったことによって近年増加が目立っています。

この代表訴訟制度によって責任を追及される者の範囲は、取締役のほかに、発起人、監査役、清算人、不公正価格による新株式引受人(商法280ノ11)、利益供与の禁止(商法294ノ2)等の責任追及の場合にも準用されています。

『株主代表訴訟』の対象となる場合は、①在任中に責任が発生した場合、②在任中に責任発生原因が存在する場合で、退任してもその責任は免れません。またさらに、死亡した場合でも相続人にその責任の追及が及ぶことになります。

取締役等が負う責任の範囲は、①取締役等としての地位に基づき負担する損害賠償責任(商法266)②資本充実の責任(商法192、280ノ13)のほか、③取締役が第三者の立場で負担する一般取引上の債務、又は不法行為の責任にも及ぶこととなります(通説)。

この制度は、商法上の大会社のみに適用されているわけではないので、中小企業といえども取締役等の役員が、会社に損害を与えた場合、株主から代表訴訟で訴えられないという絶対的な保証などあり得ません。

そこで、この代表訴訟を提起されないよう予防法務を常に意識する必要があります。が、あまり意識しすぎると取締役なのどの行動が萎縮してしまうので、常日頃から、コンプライアンス(遵法)経営を心がけ、①会社の基本理念を確立すること、②経営と法律を一体化させること、そして、③法規部署を強化し、或いは、日常的につきあえる法務コンサルタントを持つこと。という、代表訴訟回避3原則を積極的に取り入れることが必要となります。
(つづく)

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