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【プロフェッションになろう】
~新たなプロフェッションの形を考えよう(5)~
前回、『法務会計』を提唱し、実践をしている福岡の橋本先生のホームページを紹介しましたが、ご覧いただけたでしょうか。
私も大変興味深く、勉強をさせていただいているのですが、彼の言われる「法務会計」:法務+会計+マネジメント=予測+戦略+検証+予防=事務弁護士+会計人+経営コンサルタントという発想は、我々の将来にとって重要な示唆を与えてくれていると思います。
そこで、今回からは、予測+戦略+検証+予防を扱うプロフェッションとしての問題解決能力を高めるための“戦略的思考”について考えてみたいと思います。
私たち行政書士は、これまでの“代書人的思考”から脱却し、新たなスキームを創り出さなければ生きていけない時代に突入しています。
このことは、これまでも何遍も書いてきました。
そして、その新たなスキームとは、『国民の権利を擁護し義務の履行を支援する』ことに加えて、『専門家として依頼者・クライアントの抱える問題解決に当たるアドバイザー・コンサルタント』としての地位を確立することだと考えています。
だからこそ、我々行政書士の能力の一部としての“戦略的思考”を鍛える必要があるのだと確信しています。
<ゼロベース思考>と<仮説思考〉
〈ゼロベース思考〉とは、文字通り「ゼロベースで物事を考える=『既成の枠』を取り外す」と言うことです。
こういっても、たぶん解ったようなわからないような話にしか聞こえないかもしれません。
つまり、これまでの経験則や既成の概念から離れて客観的に物事を見て問題の所在を探り、純論理的に思考を組み立てる。ということなのです。
〈仮説思考〉とは、「常にその時点での結論を持ってアクション(行動)を起こす」と言うことです。
つまり、こうすれば(こういう行動を起こせば)こうなる。という仮説を立ててそれを検証する形で行動を起こすことが重要なのです。そうすれば、臨機応変な修正をしながら正しい結果を得られると言うことになります。
こういう風に書くと「なんだそんなことか」と思われる方もいるのかもしれません。しかし、「解ること」と「実行できること」は大きく異なります。
さらに「解ること」「実行できる」ことと「結果がうまくいく」ことの間にはもっと大きな溝があります。
「権利義務」にしろ「許認可」にしろ、『書類作成』という範疇では、それほど“戦略的思考”を云々しなくてもすんできたのですが、今後、“契約代理”として“予防法務”の担い手となり、あるいは企業の“経営法務コンサルタント”や家庭の“法務コンサルタント”として活動していくためには、この〈ゼロベース思考〉と〈仮説思考〉は、問題解決にあたっての重要な基本的思考であることを十分に理解する必要があります。
(つづく)
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【予防法務研究】『企業予防法務』の基本(9)
~“根保証”って何?(1)~
近年の“クレサラ問題”などで、この“根保証”という言葉を頻繁に聞くようになりました。
特に、中小零細企業に対する商工金融を扱う金融業者が多くの取引の際にこの根保証を求めてくるようです。
相手方と継続的な取引を行う場合には、債権者にとっては単純保証や連帯保証などよりも、継続的に発生するすべての債権を保証する根保証の方が安定かつ有利であることは間違いありません。
しかし、債権者にとっては有利であっても、保証人にとっては、思いもよらない過大な保証債務を負わされるリスクが高いので、個別の債務保証(単純保証、連帯保証)よりも不安要素が高く、不利であることは明らかです。
根保証には、責任無制限型と言われる“包括根保証”と責任限定型の“限定根保証”という2種類の契約があります。
“包括根保証”は、現在及び将来発生するすべての債務を包括して保証責任を負うという保証契約で、商工ローンなどを扱う金融業者の求めてくる根保証は、ほとんどがこの形です。
中には、弁済資力が脆弱な債務者に対して担保能力の高い保証人をつけさせ、根保証契約を強引に結び、保証人所有の不動産を根こそぎ取り上げてしまう悪質な業者もいるので、万が一にでもこのような相談があった場合は、包括根保証契約は絶対にしないという指導が必要が必要なのだと思われます。
この包括根保証契約は、きわめて簡単な“根保証書”によって成立してしまうので、厳重な注意が必要です。
根保証契約は、金融業者ばかりでなく、金融機関や公的な制度融資でも使われています。このような場合は、ほとんどが、保証人の保証限度と保証期間を限定した“限定根保証”契約となっているようです。
限定根保証契約の場合は、“根保証契約書”の中に根保証債務の範囲が明確に謳われていますので、包括根保証とは簡単に区別できます。公的資金や銀行等の金融機関であれば、かなりリスクは低減されますのが、慎重な対応が必要です。
(つづく)